「12月のサンライズ、取れなかった……」
出発の1ヶ月前。
普段はANAマイルをコツコツ貯め、JALのJGC取得を目標に空を飛ぶことが多い私ですが、飛行機だけでなく鈍行やフェリー、そして寝台列車が持つ“遠回りのロマン”も大好物です。
今回の山陰旅行は、鉄道ファンの登竜門ともいえるサンライズの“10時打ち”に挑もうと前々から企んでいました。
しかし、会社員としての本業に追われ、発売日の朝に完全に失念。
午後に慌てて予約サイト『えきねっと』を開いたとき、画面に並んでいたのは絶望的な無数の「×」でした。
楽しみにしていた冬の寝台列車旅は、あっけなく終わった——はずでした。
しかし、ここからが土日休みの週末トラベラーによる“旅のパズル”の本番です。
ネットの口コミや、鉄道YouTuber・スーツ氏の動画で徹底予習していた一つの仮説がありました。
「直前キャンセルは必ず出る!」
その言葉に全幅の信頼を置き、執念のキャンセル拾いが幕を開けました。
■ 1. 執念のリロードと、東京駅での「前祝い」
狙うは、1週間の中でも最難関と言われる金曜夜の出発便。
数日前から『えきねっと』と『e5489』をルーティンのようにこまめにチェックし続けます。
しかし当日になっても、空席を示す「○」や「△」の文字は現れません。
夕刻、東京駅で新潟からやってくる友人と合流しました。
「全然あかないな。でも、ここで悩んでも仕方ない!」
半ば開き直り、駅構内のビアバーへ。
冷えたビールを喉に流し込みながらも、指先だけは無意識にスマホの画面をリロードし続けていました。
その瞬間。画面が動きました。
「のびのび座席 1席あり」
心臓が大きく跳ねます。
迷うことなく即確保。
これで少なくとも「乗れない」という最悪の事態は回避できました。
そしてなぜか、ポイ活やマイル修行で培った勘のようなものが働き、確信が芽生えました。
「この流れ、まだ絶対に来るぞ……」
■ 2. 発車20分前の衝撃。混乱と歓喜の空席
のびのび座席でも、横になって移動できるだけで十分すぎる幸福です。
しかし、ホームへ向かおうと立ち上がった発車20分前。
最後にもう一度だけ——と未練がましく更新した画面に、信じられない表示が飛び込んできました。
「B寝台個室・ソロ:空席」
一瞬、思考が止まります。
頭で考えるより先に指だけが勝手に動き、見事にソロの個室を奪取!
発車までわずか20分という土壇場での大逆転劇です。
東京駅の喧騒の中、一人で小さく、しかし確実に力強いガッツポーズを決めました。
これはもう、システムとの戦いに完全に勝利した瞬間でした。
■ 3. 285系の香りと、静寂に沈む夜
足早にホームへ向かうと、そこには堂々と鎮座するベージュとエンジの車体が。


NewDaysで急いで買い込んだ“勝利のビール”を抱え、いざ出陣です。
車内に足を踏み入れた瞬間。
木の温もりと、わずかな油の香りが混ざった、寝台列車特有の空気が鼻をくすぐります。
飛行機の無機質なキャビンでも、新幹線の近代的な車内でも絶対に味わえない、「夜を走る」ための特別な匂い。
人気のシャワーカードは予想通りすでに売り切れでした。
でも、翌朝に岡山で日帰り温泉に寄る完璧なプランを立ててあるので全く問題なし。
B寝台ソロの狭くも心地よい個室の電気を落とし、車窓から流れる夜の街へ目を向けます。
NewDaysで買ったビールを開け、誰にともなく二度目の乾杯。
これがまた気持ちよすぎる。
最高の瞬間です。


熱海、そして静岡。
暗闇を切り裂くような心地よい走行音。
時折、深夜の貨物列車とすれ違うときの轟音が車内に響きます。
非日常感にテンションが上がりすぎて、なかなか眠りにつくことができません。
結局、ソロのベッドにきちんと潜り込んだのは、日付がすっかり変わってからでした。
■ 4. 旅人の特権、朝6時の冷たい空気
レールの継ぎ目を越える「ガタン、ゴトン」という規則的なリズムで目が覚めます。
ブラインドを開けると、窓の外には夜明け前の青白く幻想的な景色が広がっていました。
「もうすぐ終わってしまうのか。まだ降りたくないな……」
列車は定刻から4分ほど遅れて岡山駅に到着しました。
でも、寝台列車の旅において数分の遅れはもはや誤差であり、むしろ長く乗っていられたという余韻です。
ホームに降り立ち、岡山の朝の冷たい空気を大きく吸い込みます。
その瞬間、全身を突き抜けるような高揚感がありました。
“今、自分は寝台列車で夜を越えてここまで移動してきた”という圧倒的な優越感。
これだから、サンライズの旅は何度乗ってもやめられないのです。
■ まとめ|不便さの中にこそ、旅の真髄がある
飛行機を使ってマイルやポイントで効率的かつ快適に飛ぶ旅も、もちろん素晴らしいです。
でも、指が痛くなるほどスマホをリロードし続け、奇跡のような確率で空席を掴み取り、一晩中揺られながら移動するアナログな体験。
そこには、タイパや数字だけでは決して測れない深い満足感があります。
かつてフライトを重ねた“修行”時代とはまた違う、不自由さを全力で楽しむ旅人の原点。
サンライズ出雲・瀬戸は、そんな忘れていた気持ちを思い出させてくれました。
そして、これは今回の山陰旅行のまだほんの序章に過ぎません。
この後、さらに2泊にわたる濃密な弾丸ドライブ旅が始まります。
出雲大社に無料でお酒が飲み放題なホテルも。
2日目の記事も是非ご覧ください。
▼山陰旅行記-2日目の記事はこちら